心不全においては心室内伝導障害,心房心室間同期不全,心室内同期不全,心室間同期不全が生じやすい.これらを改善するのが両室ペーシ
ングによる心臓再同期療法(Cardiac Resynchronization Therapy; CRT) である.CRTは心収縮能が低下し,心臓の同期不全を伴う中等症以上
の慢性心不全患者において,心不全悪化を防止するのみならずその予後を改善する419).一方,CRTはすべての心不全例で有効とは限らな
い.CRT有効性の予知指標として左室駆出率の低下と心電図上の幅広いQRS波が重要である.多くの臨床試験はQRS幅が120~ 150msec以上
の症例を対象として実施されており,本ガイドラインでも幅広いQRS波の基準として120msec以上とした.後述するように150msec以上の著
明な幅広いQRSを有する例でCRTの効果は顕著であり,特に心不全の程度が軽症な例のCRTの適応は今後も検討を要する.左室収縮の同期不
全の検出に心エコー検査等の画像診断に期待がかかるが,未だ判定法は確立しておらず,CRTの反応性・有効性の指標としての評価は定まって
いない.
不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Non-Pharmacotherapy of Cardiac Arrhythmias(JCS 2011)