現在までのエビデンスからは,心不全患者の予後に対するCRT-PとCRT-Dの効果は同程度である.確かに,CRT-Pは心不全患者の総死亡を減
らすが,心臓突然死には影響しないともいわれる441).CRTにICDのバックアップが入ることにより,心臓突然死を抑制することで心不全患者
の総死亡も抑制する可能性がある442).近年,CRTによる催不整脈作用が問題となってきている443),444).その機序はまだ十分解明されて
いないが,CRTによる左室心外膜ペーシングが左室心外膜側から心内膜側への再分極過程の不均一性を増大させ,不整脈誘発に働くことが示唆
されている443),445).NYHAクラスⅢあるいはクラスⅣで,左室駆出率35%以下,QRS幅120msec以上,かつICDの適応(ClassⅠあるいはⅡa)
の患者には,CRT-Dが推奨される.ただし,その費用対効果については,まだ十分検討されておらず,今後の課題であろう.
不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Non-Pharmacotherapy of Cardiac Arrhythmias(JCS 2011)