4 NYHAクラスⅠあるいはクラスⅡへのCRT
 軽症心不全患者へのCRTの有用性はまだ十分確立していない.ICD適応の軽症心不全患者を対象にICD単独とCRT-Dを比較した臨床試験がい
くつかある.NYHAクラスⅡ の患者を対象としたMIRACLE ICD Ⅱ 436),NYHAクラスⅠあるいはクラスⅡの患者を対象としたMADIT-CRT437)
では,CRT-D群がICD群に比し,左室容積と左室駆出率を改善し,MADIT-RITでは心不全による入院を抑制した.この効果はQRS幅150msec以上
の例,NYHAクラスⅡの例で有意であった.さらに,NYHAクラスⅡあるいはクラスⅢの患者を対象としたRAFT438)では,NYHAクラスⅡが
約80%を占めていながら,CRT-D群がICD群に比し,総死亡および心不全入院を改善した.ただし,その効果はQRS幅150msec以上の例で有意
であった.一方,薬物治療とCRT(CRT-Dを含む)を比較した試験として,NYHAクラスⅠあるいはクラスⅡの患者を対象としたREVERSE439)
において,CRTは心不全入院を減らし,左室容積と左室駆出率を改善した.また,その効果はQRS幅152msec以上の例で有意であった.NYHAク
ラスⅠ については,MADIT-CRTで15%,REVERSEで18%しか含まれておらず,サブ解析でもその効果は乏しかった437),440).軽症例へのCRT
は,NYHAクラスⅡでQRS幅150msec以上の例において逆リモデリングを介して心不全や病態の進行を抑制する効果が期待されるが,長期予後
へどう係わるかはまだ今後の研究が必要であろう.
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Ⅵ 心臓再同期療法・両室ペーシング機能付き植込み型除細動器 > 1  心臓再同期療法 > 4 NYHAクラスⅠあるいはクラスⅡへのCRT
不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Non-Pharmacotherapy of Cardiac Arrhythmias(JCS 2011)