Class Ⅰ:
1. 心室細動が臨床的に確認されている場合
2. 器質的心疾患に伴う持続性心室頻拍を有し,以下の条件を満たすもの
(1)心室頻拍中に失神を伴う場合
(2) 頻拍中の血圧が80mmHg以下,あるいは脳虚血症状や胸痛を訴える場合
(3)多形性心室頻拍
(4) 血行動態の安定している単形性心室頻拍であっても,薬物治療が無効または副作用のため使用できない場合や薬効評価が不可能な場合,
あるいはカテーテルアブレーションが無効あるいは不可能な場合
ClassⅡ a:
1. 器質的心疾患に伴う持続性心室頻拍がカテーテルアブレーションにより誘発されなくなった場合
2. 器質的心疾患に伴う持続性心室頻拍を有し,臨床経過や薬効評価にて有効な薬剤が見つかっている場合
ClassⅡb:
1. 急性の原因(急性虚血,電解質異常,薬剤等)による心室頻拍,心室細動の可能性が高く,十分な治療にもかかわらず再度その原因に暴露
されるリスクが高いと考えられる場合
ClassⅢ:
1. カテーテルアブレーションや外科的手術により根治可能な原因による心室細動,心室頻拍(WPW症候群における頻脈性心房細動・粗動や特
発性持続性心室頻拍)
2. 12か月以上の余命が期待できない場合
3. 精神障害等で治療に際して患者の同意や協力が得られない場合
4. 急性の原因(急性虚血,電解質異常,薬剤等)が明らかな心室頻拍,心室細動で,その原因の除去により心室頻拍,心室細動が予防でき
ると判断される場合
5. 抗不整脈薬やカテーテルアブレーションでコントロールできない頻回に繰り返す心室頻拍あるいは心室細動
6. 心移植,心臓再同期療法(CRT),左室補助装置(LVAD)の適応とならないNYHAクラスⅣの薬物治療抵抗性の重度うっ血性心不全
院外において発生した持続性心室頻拍や心室細動の致死率は高く,初回のイベントから生還した患者が次の発作でも救命されるとは限らない.
したがって心室細動や持続性心室頻拍の原因を除去することができない(原因が不明な場合も含む)患者は心臓突然死のリスクが最も高く,原疾
患や心機能を問わず最善の手段が講じられるべきである.一方,WPW症候群,電解質異常,心筋梗塞発症後急性期(48時間以内),冠攣縮性狭
心症等に対しては原因に対する治療が優先され,ICDの適応とはならない.ただし,他にも原因となり得る病態が合併していたり,将来,同様の原
因にさらされる可能性が高い場合はICD適応が考慮されるかもしれない.
器質的心疾患に伴う持続性心室頻拍,心室細動,心臓突然死からの蘇生例は不整脈再発のハイリスク例であり,2 年間の再発率は10~ 20%
と報告されている281).これらに対する治療法としては,ホルター心電図または電気生理検査ガイドによる抗不整脈薬治療,アミオダロンの経験的
投与,手術療法,カテーテルアブレーション,ICD等がある44),282)-295).Ⅰ群抗不整脈薬は,催不整脈作用,陰性変力作用および低い有効性のた
めに限界がある.前向き無作為試験の結果では,電気生理検査ガイド下のソタロールや経験的アミオダロン投与はⅠ群薬に比較して心室頻拍,心
室細動の再発予防に有用である281).しかし,ICDと薬物の効果を比較した大規模試験の結果では,器質的心疾患に伴う持続性心室頻拍,心室細
動患者に対し,ICDが抗不整脈薬療法よりも生命予後を改善させた45),296),297).カテーテルアブレーションは血行動態的に不安定な心室頻拍や心
室細動に対しても行われるようになったが298),その成功率は必ずしも高くなく根治性にも限界があり,たとえ手技に成功したと判断されても原則と
してICDの適用が考慮されるべきである.しかし,ICDは頻拍を停止させる対症療法であり,インセサント型や頻回の心室頻拍等に対してはカテーテ
ルアブレーションや抗不整脈薬との併用が有効である283),299).
ICDは薬剤と同様に持続性心室頻拍,心室細動例に対して広く適用可能な治療法である.ICDと薬剤(主にアミオダロン)の優劣を比較すべく,器
質的心疾患に伴う持続性心室頻拍, 心室細動例を対象として,CASH(Cardiac Arrest Study Hamburg),CIDS(Canadian Implantable
Defibrillator Study),AVID(AntiarrhythmicsVersus Implantable Defibrillators)の各臨床試験が行われた45),296),297).いずれも器質的心疾患
の種類にかかわらず,ICDは薬物治療に比して予後を改善させる傾向を見せたが,ICDの予後改善効果を統計的に証明できたのはAVIDのみであ
る.AVIDでこのような結果が得られた理由として,(1)1,000例以上を登録した大規模試験であること,(2)当時最も進歩したデバイスを用いたこと,
等が考えられる.AVIDによると,ICDは相対的総死亡率を1年目で39%,2年で27%,3 年で31%減らした.AVID,CIDS,CASHをまとめたメタ解析
では,ICDはアミオダロンに比して有意に死亡率を減少し,6年間で27%の相対死亡率を減少させた299).AVIDのサブ解析やメタ解析は左室駆出率
が35%以下の患者群においてICDのより高い効果を示しており,心機能低下例にはより積極的なICD適応が推奨される300).
不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Non-Pharmacotherapy of Cardiac Arrhythmias(JCS 2011)