心臓突然死は心不全死と並んで心疾患患者の主要な死因であり,その発生を未然に防ぐことは生命予後の改善に極めて重要である.植込み型
除細動器(ICD)は心疾患の種類や一次予防,二次予防にかかわらず,生命予後を改善する最も有効な治療法の1つである.我が国では1996年に
保険適用されたが,ICD本体の小型軽量化やデュアルチャンバー型の開発等により,植込み手技や術後管理が容易となった.現在ではICDは致死
的心室性不整脈の治療戦略上,不可欠の治療法となっている(図1).一方,ICD適応の根拠となる臨床試験のほとんどが海外で行われ,器質的
心疾患の背景や予後が異なる我が国に試験結果をそのまま当てはめることができるか不明な点もある(図3).以下に記載する適応基準の多くは
海外の臨床試験に依拠して考案されたが,我が国特有の患者背景も加味して,包括的に策定した.ただし,患者の有する背景は複雑で,本ガイドラ
インの適応クラスの条件にすべての患者が該当するわけではない.したがって,個々の患者に対するICDの適応については記述された条件のみで
なく,その他の状況も勘案し,適用されるべきである.また,クラスⅠまたはクラスⅢに該当する場合でも最終的な判断は患者の臨床的,社会的背
景を熟知した担当医によってなされるべきであり,ガイドラインと異なる方針決定も想定し得る.
今回の改訂は2006年改訂版279)をふまえて再度考察されたものであるが,2006年以降,新しいエビデンスが多く報告された.これらに基づいて策
定された海外のガイドラインではICDの適応がさらに拡大されており280),多くのクラス分類について改訂が必要になった.また,前回のガイドライン
は不整脈の状況や症状に応じたクラス分類を提唱していたが,今回は原因となる基礎疾患別に記載することとした.
心機能低下例に対するICDの適応判断は極めて重要であるが,その多くは,左室駆出率に依存している.しかしながら左室駆出率は様々な方法
で測定され,黄金律と言うものはない.したがって,左室駆出率の数値化は各施設が得意とする最も信頼のおける方法によって行われ,必要に応じ
て複数の検査結果を勘案して判断されるべきである.各クラスにおいて示される左室駆出率の上限は臨床試験の登録基準に基づいたものであり,
30~40%の範囲内でばらつきがある.
各疾患別の項目では可能な限り二次予防と一次予防とに分けてクラス分類を記述した.二次予防とは過去に心肺停止,持続性心室頻拍,心室細
動の心電図が記録されているものに対する適応で,一次予防とは心室頻拍が非持続性である場合,失神を認めるが心電図で不整脈が記録されて
いない場合,あるいは低心機能のために突然死,不整脈死のリスクが高い場合,等に対する適応を指す.
不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Non-Pharmacotherapy of Cardiac Arrhythmias(JCS 2011)