DEFINITEは左室駆出率35%以下の非虚血性拡張型心筋症でホルター心電図にて心室期外収縮(10/時以上)あるいは非持続性心室頻拍を認
めた患者を対象としたが,ICD群は薬物治療のみの群に比して総死亡を35%減少させたものの有意ではなかった(p=0.08)312).SCDHeFTの
対象は48%が非虚血性心不全でありながら,ICDの優位性が示された.しかし,非虚血性心不全例でのプラセボ群の総死亡は虚血性心不全例に
比して少なく(非虚血性27% /5年,虚血性43% /5年),ICD群はプラセボ群に比し総死亡を27%減少させたが有意ではなかった(p=0.06)312).
DEFINITE,SCD-HeFTのいずれも単独で非虚血性拡張型心筋症に対するICDの有意な効果を示せなかった.そこで2004年に非虚血性拡張型心
筋症に対するICDの効果のメタ解析が報告された306).5つの臨床試験311),312),319)-321)( n=1,854)のメタ解析では,相対死亡率は
ICDによって31%低減された.
我が国の非虚血性心不全患者について,突然死の頻度を示したデータはない.しかし,慢性心不全患者の予後を観察したコホート研究では,
日本人の心不全患者の7割が非虚血性心不全であり,その総死亡は3 年で20~30%と報告されている322).CHARTによると左室駆出率30%未満
の心不全患者では3年で15%に心臓突然死を認めた323).したがって,非虚血性拡張型心筋症の予後や突然死の発生率は海外と同様と考えら
れ,先に示した試験の結果を参考にICDの適応を考察して良いと判断できる.
非虚血性拡張型心筋症における電気生理検査の突然死リスク予測については冠動脈疾患に比べて難しいとされている.一方,DEFINITEに
おいてはICD群に振り分けられた患者229名のうち216名(94%)についてICDを使った電気生理検査が行われ,誘発された患者のICD適切作動率
(34.5%)は誘発されなかった患者のそれ(12.0%)に比べて2.6倍高かった324).ただし,電気生理検査の有用性は否定的な結果を示した
臨床試験も多いため325)-329),冠動脈疾患に比べるとその果たす役割は小さいと判断される.
不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Non-Pharmacotherapy of Cardiac Arrhythmias(JCS 2011)