◆ その他の上室性頻拍に対する手術の適応
ClassⅠ:
1. 通常型心房粗動あるいは心房リエントリー性頻拍を有し,器質的心疾患に対する心臓手術を行う場合
2. 心外導管を用いたFontan型手術(Total Cavopulmonary Connection; TCPC)等の術後に発生した上室性頻拍で,特殊な血液循環動態の
ためにカテーテルアブレーションが不可能あるいは困難な場合
3. 薬物治療が無効で,重篤な症状またはQOLの著しい低下を伴うWPW症候群等による上室性頻拍で,カテーテルアブレーションの不成功ある
いは再発例
ClassⅡ a:
1. 先天性心疾患に対する手術後に発生した上室性頻拍で,頻拍発作に伴って血行動態の破綻を来たし,カテーテルアブレーションが不成功
あるいは再発した場合
器質的心疾患に対する手術を必要とする患者で通常型心房粗動あるいは心房リエントリー性頻拍を合併する例では,頻拍発作は手術後急性期
の管理を困難にするだけでなく,術後遠隔期死亡の原因となることが知られている.術前あるいは術中のマッピング所見に基づいた不整脈手術の
適応があり,その根治率も高い.
Fontan 型手術やMustard 手術やSenning 手術等複雑な心房切開を必要とする乳幼児期心臓手術では,術後遠隔期に心房リエントリー性頻拍
を発生することがあり,頻拍に伴う自覚症状だけでなく血行動態の悪化も生じる123),472)-478).頻拍の機序として,峡部依存性の心房粗動と
心房切開線を旋回するリエントリーが考えられている479).通常は,カテーテルアブレーションが適応となるが,これが不成功あるいは再発した
場合には,頻拍回路の切断を行う不整脈手術の適応がある480)-482).特に,心外導管を用いたFontan型手術(Total Cavopulmonary Connection;
TCPC)等の術後では,特殊な血液循環動態のためにカテーテルアブレーションが不可能あるいは困難であり,外科治療以外には根本的治療が不
可能な例がある.WPW症候群ではカテーテルアブレーションによる治療成績が優れているが,副伝導路が心外膜側に存在する等の理由で,
カテーテルアブレーションが不成功あるいは再発した例では外科的副伝導路切断術の適応となる483).
不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Non-Pharmacotherapy of Cardiac Arrhythmias(JCS 2011)