3 心室頻拍
◆ 心室頻拍手術の適応

ClassⅠ:
 1. 基礎心疾患に伴う単形性持続性心室頻拍を有し,薬物治療,カテーテルアブレーション,植込み型除細動器が無効ないし使用できず,再現性を持って心室頻拍
       を誘発される場合
 2. 薬物治療が無効または使用不能の重篤な症状またはQOLの著しい低下を伴う特発性持続性心室頻拍で,カテーテルアブレーションが不成功あるいは再発した
       場合で,再施行によっても高い成功率が期待できない場合
 3. 心室頻拍の頻回発作,あるいはそれに伴うICDの頻回作動があり,薬物治療やカテーテルアブレーションにても頻回発作が抑制されない場合
ClassⅡ a:
 1. 心筋梗塞に合併した単形性持続性心室頻拍で,心室瘤あるいは左室壁運動異常に起因する心不全や血栓塞栓症を伴う場合

 基礎心疾患に伴う心室頻拍においては,アミオダロン,ソタロール等の薬物療法,カテーテルアブレーション,植込み型除細動器が治療の主役であるが,これらの治
療法が無効あるいは施行不可能な場合は手術療法の適応となる293),484)-489).単形性持続性心室頻拍では,術前あるいは術中のマッピングにより頻拍起源あるい
はリエントリー回路の局在を同定することが頻拍の根治に重要であることが示されている488),489).一方,心室細動あるいは多形性心室頻拍ではマッピングは困難あ
るいは不可能で,外科治療の有効性も低い.また,心筋梗塞に合併した単形性持続性心室頻拍では,心室瘤あるいは左室壁運動異常に起因する心不全や血栓塞栓
症に対して心室瘤切除術や左室形成術等の外科手術を行う際,同時に心室頻拍に対しても不整脈手術を行う適応がある446).薬物療法が無効で,重篤な症状または
QOLの著しい低下を伴う特発性心室頻拍では,カテーテルアブレーションによる治療成績が優れているが,心内膜アプローチによるカテーテルアブレーションでは焼灼
不可能な心外膜起源頻拍やカテーテルアブレーション不成功例あるいは再発例では手術療法が適応となる.

 心室頻拍の頻回発作とそれに伴うICDの頻回作動は患者のQOLだけでなく生命予後にも影響を及ぼすことが示されており256),特に24時間以内に3回以上独立し
て発生する頻回発作はelectrical stormと定義され,その発生には自律神経等様々な要因が関与していることが考えられている.まず抗不整脈薬の投与に加え全身
麻酔を含めた鎮静が行なわれるが,頻回に発生する心室頻拍に対してはカテーテルアブレーションが行なわれる.肥厚心筋や壁在リエントリー回路等のためにアブ
レーションの効果が得られない場合には外科治療の適応となる.
 
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Ⅶ 外科手術 > 3 心室頻拍
不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Non-Pharmacotherapy of Cardiac Arrhythmias(JCS 2011)