Class Ⅰ:
1. 心停止蘇生例
2. 自然停止する心室細動,多形性心室頻拍が確認されている場合
ClassⅡ a:
1. Brugada型心電図(coved型)(注)を有する例で,以下の3項目のうち,2 項目以上を満たす場合
(1)失神の既往
(2)突然死の家族歴
(3)電気生理検査で心室細動が誘発される場合
ClassⅡb:
1. Brugada型心電図(coved型)を有する例(注)で,上記の3項目のうち,1 項目のみを満たす場合
注) 薬物負荷,一肋間上の心電図記録で認めた場合も含む.
Brugada症候群は,右側胸部誘導(V1~V3)において右脚ブロック様波形とST上昇(Brugada signまたはBrugada型心電図)を伴う特発性心室
細動である349).心電図異常はtype1~ 3の3 型に分類され350),最も診断的な価値が高いものはtype 1 波形(coved型)であるが,しばしば間歇的
に出現し,時に正常化する.顕在化させるためにはNa チャンネル遮断薬による誘発試験が有用である351).このST上昇は運動負荷,β受容体刺
激,α受容体遮断により抑制され,β受容体遮断,α受容体刺激により増強し,過換気,運動負荷後の迷走神経反射やエドロホニウム等の副交感神
経緊張,発熱により増強し,アトロピンにより抑制される352).Brugada 症候群の診断基準として,明らかなcoved型ST上昇(0.2mV以上)を有し,
かつ(1)心室細動の既往,(2)自然停止する多形性心室頻拍,(3)突然死(< 45歳)の家族歴,(4)家族のcoved型ST上昇,(5)電気生理検査
で誘発される心室細動,(6)失神または夜間の臨終様呼吸,のいずれかを満たす場合とされている350),353).Brugada症候群では,男性が圧倒的
に多く,アジア人に多く,突然死の家族歴を多く有すること等より遺伝子異常の存在が推測されており,現時点でNa チャネル遺伝子であるSCN5A
のαサブユニットの遺伝子異常354)やβサブユニットの遺伝子異常355),Caチャネルの遺伝子異常356)等が報告され,イオンチャネル病の1 つである
可能性が示唆されている.Brugada症候群では,心電図が正常化する症例が多いことから,その正確な頻度は不明であるが,特発性心室細動の
なかで最も突然死の頻度が高い.現時点では,突然死からの蘇生例では,二次予防としてICD植込みが唯一の治療法である353).
Brugada症候群における心室細動再発の頻度はBrugada症候群以外の正常心電図を示す特発性心室細動例に比較して有意に高率である357).
症状を有する症例における3年間の不整脈イベントの再発率は約30%と報告されている358).一方,Brugada型心電図を認めても無症候性の場合,
突然死の確率は低い357),359)-361).ただし心室細動が確認されていない症例でも, 典型的なBrugada症候群の心電図の特徴を有し,失神発作
の既往,プログラム刺激による多形性心室頻拍の誘発,突然死の家族歴等によってICD植込みが考慮されている353),359),362).
不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Non-Pharmacotherapy of Cardiac Arrhythmias(JCS 2011)