Class Ⅰ:
1. 過去に持続性心室頻拍,心室細動,心肺停止の既往を有する場合
Class Ⅱa:
1. 非持続性心室頻拍,突然死の家族歴,失神,左室壁厚30mm以上,運動時の血圧反応異常のいずれかを認める場合
肥大型心筋症は特に40歳以下の若年者における突然死の原因として重要な心筋疾患である.遺伝性を示すことが多く,運動時の突然死として
発症することも多い335),336).過去に持続性心室頻拍や心室細動の既往を有する患者は年率10%程度に致死的不整脈が再発するとされており,
2 次予防のための積極的なICDの適用が推奨される337).一方,一次予防の適応については2003年に米国心臓病学会とヨーロッパ心臓病学会が
肥大型心筋症の突然死に関わるリスク要因を提唱した.これによると,非持続性心室頻拍,突然死の家族歴,失神,左室壁厚30mm以上,運動時
の血圧反応異常が主要なリスクであると報告されている.ただし,リスク要因を判断するためのICDを用いた無作為試験はこれまで行われておら
ず,上記のリスク要因が良好に機能するかという証明はなされていない.無作為試験ではないが2007年に肥大型心筋症506例に対するICDの有効
性を見た最大規模の報告がなされた337),338).これによると,2 次予防目的で適用されたICDの作動率は年間10%程度とされ,1次予防を目的
とした(上記のリスク要因を有する)場合のそれは年間4%であると報告されている.この試験ではリスク要因の数と作動率の違いが検討されたが,
それらの間に有意な関係は確認されなかった.一方,電気生理検査によるリスク評価については否定的な意見が多く,最近ではほとんど行われて
いない339).リスク要因を持たない患者の予後は比較的良好で無症候性の場合,年間死亡率は1%とする報告があり340),341),これに比べると
リスク要因を有する患者の年間突然死発生率4─ 6%は明らかに高い.肥大型心筋症の突然死は若年で活動性の高い年齢層に好発する病態でも
あり,リスク要因を有する患者に対するICDの積極的な適応が推奨される.
不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Non-Pharmacotherapy of Cardiac Arrhythmias(JCS 2011)