4 非薬物療法の適応決定に際し評価すべき事項
 不整脈の非薬物療法の目的は,(1)心臓突然死の予防,生命予後(mortality)の改善,(2)不整脈に基づく症状の改善,生活予後(morbidity)
の改善,および(3)患者の社会生活上の満足度の改善にあり,(2)(3)は生活の質(quality of life; QOL)の改善といわれる.換言すれば,非薬物
治療の適応は医学(生物学)的側面からと社会(医学)的側面から検討し,決定する必要がある.前者としては不整脈によるAdams-Stokes発作
(失神,眼前暗黒感を伴うめまい等の脳虚血症状),動悸,胸内苦悶感,胸痛,心不全症状,血行動態の破綻等の症状を来たし得るか,そして致死
的になり得るかを評価する必要がある.さらに,基礎心疾患,心機能からみた評価,頻脈性と徐脈性不整脈との関係からみた評価,薬物や運動に
対する反応からみた評価,臨床心臓電気生理検査,加算平均心電図,T wave alternans等による評価が必要となる.後者としては,患者を全人的
に把握し,社会(家庭ないし職場等)人としての満足度と要求度を評価する必要がある.例えば,飛行機のパイロット,電車や車の運転手および高
所での作業等の危険を伴う職業に従事する場合,若年者,特にスポーツ活動を希望する場合,妊娠を希望する場合,車の運転を希望する場合,遠
隔地の居住者,頻回に旅行,出張(特に時差を伴う海外出張)をする場合,精神的および肉体的ストレスの多い職業に従事している場合等がある.
次へ
Ⅰ ガイドラインの背景および考え方 > 4 非薬物療法の適応決定に際し評価すべき事項
不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Non-Pharmacotherapy of Cardiac Arrhythmias(JCS 2011)