徐脈性不整脈に対するペースメーカ療法は我が国では1974年に保険償還された.その後急速に普及し,1980年代にはペースメーカの小型化,
電池寿命延長,生理的ペースメーカの開発により年間植込み症例数は年々増加し,2010年には約57,500例(新規:約36,000件,交換:約21,000
件)まで増加している(2002年は約42,700件).一方,頻脈性不整脈に対する治療は1950年代以降薬物療法が中心であったが,1989年のCAST
(Cardiac Arrhythmia Suppression Trial)報告以来1),薬物療法は大きな転換期を迎え,非薬物療法の位置づけが飛躍的に向上した.頻脈性不
整脈の根治を目的として1970年代から1980年代には外科手術が進歩した.さらに1980年代にカテーテルアブレーションと植込み型除細動器(ICD)
が開発され1990年代には欧米で急速に普及した.カテーテルアブレーションは開胸術を必要としない,不整脈発生源に対する根治療法として確立
している.また,米国では心臓突然死が年間約40万人でその80~ 90%が心室細動・心室頻拍によると考えられており2),3),ICDは最も強力な突
然死予防法として位置づけられている.慢性心不全症例の20~ 30%に合併する左脚ブロック型心室内伝導障害が独立した予後規定因子となるこ
とから,1996年以降,両室ペーシングによる心臓再同期療法(CRT)が確立され,欧米では急速に普及しつつある.さらに慢性心不全の死因は40
~50%が突然死であり,その多くは心室細動によると考えられることから,両室ペーシング機能付き植込み型除細動器(CRT-D)が開発された.
我が国では1994年にカテーテルアブレーション,1996年にICD,2004年にCRT,そして2006年にCRT-Dの保険適用が認められた(図1).各々の
非薬物療法は進歩の著しい領域であり,ICD,CRT/CRT-Dの植込み件数を見ても分かるように現在なお普及過程にある(図2).我が国での心臓
突然死の実態は必ずしも明らかではないが4),6 ~8万人/年と推定される.その直接死因の多くは心室性頻脈性不整脈と考えられるが5),6),
その基礎心疾患はICD植込み症例の分析からは欧米と異なることが示唆されている7)(図3).したがって,頻脈性不整脈に対して薬物療法と非薬
物療法の使い分けのみならず,カテーテルアブレーションとICDと外科手術の使い分けが必要であり,現時点における非薬物治療のガイドライン作
成の臨床的意義は極めて高い.
不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Non-Pharmacotherapy of Cardiac Arrhythmias(JCS 2011)