3 心房粗動・心房頻拍
◆ 心房粗動(通常型・非通常型)

ClassⅠ:
 1. 頻拍や失神,心不全等の症状,QOLの低下を伴う心房粗動
 2. 心房細動に対する薬物治療中に出現した通常型心房粗動
 3. 心房細動アブレーション中に出現するか以前に記録されている通常型心房粗動
ClassⅡ a:
 1. 他の頻拍に対するカテーテルアブレーション治療中に偶然誘発された通常型心房粗動
 2. 薬物治療抵抗性の非通常型心房粗動
 3. パイロットや公共交通機関の運転手等職業上制限となる場合
ClassⅡb:
 1. 他の頻拍に対するカテーテルアブレーション治療中に偶然誘発された非通常型心房粗動

 心房粗動は約300/分(240~ 440/分)の規則正しい粗動波を特徴とする上室性頻拍である.心房レートが240~ 340/分と比較的遅く,心房ペーシングにより停止,
捕捉(エントレイン)されるⅠ型と,より速い心房興奮頻度(350~ 450/分)で心房ペーシングの影響を受けにくいⅡ型に分類される.Ⅰ型の多くは三尖弁輪部を旋回
する右房内マクロリエントリー性頻拍であり,下壁誘導において典型的な鋸歯状波形を示し,「通常型」と呼称される.通常型心房粗動は下壁誘導における粗動波形
が陰性の反時計方向旋回型と,粗動波が陽性の時計方向旋回型に分けられる.非通常型心房粗動は三尖弁輪部以外を旋回するマクロリエントリー性頻拍である.Ⅱ型は心房細動に近い頻拍で,機序は個々の例で異なる.

 心房粗動の自覚症状は,房室伝導比により左右され,無症状で経過するものもあるが,1:1房室伝導から失神に陥ることもある.通常型心房粗動は三尖弁輪部―
下大静脈間の峡部を線状焼灼することにより根治可能である210),211)

 非通常型心房粗動は,下部ループリエントリー性頻拍212)等以外は右房峡部非依存性であるため症例ごとにアブレーション標的部位は異なる.開心術既往例では右房壁の切開創を旋回するリエントリー性頻拍,あるいは通常型心房粗動の可能性が高い213).心房内リエントリーの他,異常自動能に起因することもあり,粗動中の右房,左房の詳細な興奮伝播様式を検討するため,三次元マッピングシステムを用いたリエントリー回路同定,頻拍起源同定が有用である.

◆ 心房頻拍

ClassⅠ:
 1. 症状を有する頻拍起源の限局した再発性の心房頻拍で薬物治療が無効な場合
 2. インセサント型心房頻拍
ClassⅡ a:
 1. 症状を有する頻拍起源の限局した心房頻拍で薬物治療が有効な場合
 2. 症状のない心房頻拍で心室機能低下を伴う場合

 心房頻拍には,異常自動能(異所性自動能,撃発活動)やマイクロリエントリー等限局した発生源(focal origin)を有するものと,マクロリエントリーによるものがあるが,後者は峡部非依存性の心房粗動との区別が曖昧である214)-217).Focal originには洞結節領域のリエントリー性頻拍(洞結節リエントリー性頻拍),房室結
節領域のリエントリー性心房頻拍,その他の領域のリエントリー性頻拍がある.一方,異常自動能性は肺静脈,上大静脈,冠状静脈,心耳,分界稜等が主たる発生源である218).また不適切な洞性頻脈は若い女性に好発する頻脈性不整脈である219),220).洞結節や房室接合部領域の頻拍に対するアブレーションは,洞機能不全,房室伝導障害の合併症を招く可能性がある.心房頻拍が長期間持続すると頻脈誘発心筋症により左室機能が低下するため,無症状であってもアブレーションがすすめられる.
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Ⅳ カテーテルアブレーション > 3 心房粗動・心房頻拍
不整脈の非薬物治療ガイドライン(2011年改訂版)
Guidelines for Non-Pharmacotherapy of Cardiac Arrhythmias(JCS 2011)